追憶のインド


追憶のインド 〜祈り、暑さ、星空、そしてシンドバット〜

バナラシの祈り

パトナへ向かう途中、僕は**バナラシ(ベナレス)**へ立ち寄った。
言わずと知れた、ガンジス川の沐浴の聖地

川辺には、沐浴する人たちの姿がぎっしり。
「すごー!!!」と心の中で叫びながら、その光景に圧倒された。

インドの人々の信仰の深さに、ただただ驚いた。
「御利益があるのかもしれんけど…
 この川、入ったら絶対お腹壊すやろ…」
そんな現実的な声も、心の中で響いていた。


市場の迷宮とインディージョーンズ

バナラシの市場の通路は、まるで迷路。
どんどん奥に進むと、「あれ、元の場所に帰れるんかな…?」と不安になるほど。
細い道に衣料品やサリーの店がひしめき合い、色とりどりの布が風に揺れていた。

その光景は、後年映画で観た**『インディー・ジョーンズ』の世界**そのものだった。

道端では、おばちゃんが椅子ひとつ置いて、サモッサやミカンを売っている。
店というより「その場で生きている」感じ。
みんな、食べて生きるために必死だった。


石のホテルと、砂漠の星

どこの町だったかは忘れてしまったけれど、
バス停の終点で降ろされ、「この町で合ってる?」と運転手に聞くと、
無言で指を前方に向け、「フォー キロメートル」と一言。

炎天下の砂漠を4km歩くのは地獄だった。
バックパックは重いし、日差しを遮るものは何もない。
ようやく町の端に辿り着いたとき、「HOTEL」と書かれた看板を見つけて、思わずフロントに飛び込んだ。

そのホテルは、大きな石だけで作られた不思議な建物だった。
砂漠の真ん中なので、夜はぐっと冷え込む。
でも、外に出ると——満天の星空。

そのとき、「ああ、自分は地球にいるんだ」と、
心からそう感じた。


羊と少年と、時間のゆらぎ

翌朝、ホテルの外に出ると、羊飼いの少年がたくさんの羊を連れて、
左の地平線から現れ、やがて右の地平線へと消えていった。

夕方になると、今度は同じ少年が、逆方向から現れてまた去っていった。

それを見ていたら、
日本での“時間”の感覚が、ふわっとほどけた。


赤土の道と、煙と、憧れの風景

ある町で、夕暮れに駅に降り立った。
舗装もされていない赤土の道を、
人と牛と犬と鶏が、一緒に歩いていた。

民家からは夕食の支度の匂いが漂い、
空には薄く煙が立ち上っていた。
まるで、おとぎの国。


シンドバットのように

そのときふと思い出した。
僕は小さいころ、『シンドバットの冒険』の絵本が大好きだった。
いろんな国を旅するシンドバットに憧れていた。

——今、僕はそのシンドバットみたいな旅をしているんだ。
アメリカ、インド、そしてこれから向かうネパール。

夢中で見ていた絵本の世界が、
いつの間にか、自分の足で歩いている現実になっていた。


🌟次回、「ネパール編」に続く。

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